「ねえ、何描いてんの?」
「分かんないよ、手が勝手に動いてるんだもん」
ふーん、すごい言葉だ。
「何、描いてもいいよって言ったじゃん」
そうなんだよね。
何でもありのアートだもんね。
Aさんの描いた線をたどっていくと、突然、きいろの風が吹いてきたり、
灰色の泥団子が転がってきて、
首をすくめたり、大きくのけぞったり・・・油断はできない。
それでも、絡み合った線をかき分け進んでいくと、君の足跡のようなものが見えてくる。
凸凹の地面に不意に現れ、すぐに消え、見え隠れしながら色彩の森の奥へと続いている。
ときにジャンプしたり、まっすぐ上に伸び上がったり、不思議な動きを繰り返し、ボクは迷路の森を行ったり来たりする。
Aさんの絵はそんな一筋縄ではいかない森の案内図なのかもしれない。
ぐるぐるぐる、線は小さなピンクの池に渦巻き
とつぜん、オレンジ色の水玉模様に変化し、
Aさんの森はどんどん豊かになる。
「面白い?」
「んー、分かんないよ」
そうなんだよね。
面白がっているのはきっと君の手なんだよね。