What a Wonderful world

 

仲間たちの表現には、既製の言葉や価値観で組み立てられたボクらの世界をまったく別の世界に変えてしまう魔法のような力がある。
今回はIさんのそんなステキな絵を紹介しよう。
梱包用紙にアクリル絵の具とボールペンで描かれた小さな作品。
画面の真ん中に青い瓶のようなものが描かれてる。
ぐにゃっと曲がった形。
よく見ると、極細のボールペンで描かれた人物。
えっ、何だこれ?
「これ、だれ?」
「男のコ」
「これは?」
「女のコ」
次々と聞いていく。
「おばあちゃん、車椅子のおじいちゃん、」
「えっ?自転車じゃないの?」
「自転車」
「じゃあ、おばあちゃんが持ってるのなに?」
「つえ」
なるほど・・・。
みんな左を向いて両手を広げて歩いている格好をしている。
これはIさんの絵の特徴。
「 みんな、ビンの中にいるの?」
「水のなか」
「みんないるの」
Iさんとのピンポンみたいな会話。ボクの問いかけに返ってくる言葉は、ボクの想像力にリズムをつけてくれる。
そうか、男のコや女のコ、おじいちゃん、おばあちゃんがいるのは水の世界なんだ。
そう思うと、このナスみたいな青いものが地球にも雨粒のようにも思えてくる。
右上にあるのは太陽だろうか、風船だろうか?
下にひろがっているのは草はらかな?
一枚の風景画?
すると、やっぱりこの青いのは雨粒の世界なんだろうか?
ボクの想像力はジエットコースターみたいに走り出す。
草の中にはアリンコがいるぞ!
わけの分からないおせんべいみたいな生き物もいるし、口を開けて何だか騒いでいる虫さんたちもいる。
みんな同じ大きさ、みんなにぎやか、みんなどこかに向かっている。
ああ、なんてすばらしい世界なんだ!
ボクは嬉しくなる。
ルイ・アームストロングの『What a Wonderful  World  』を口ずさみたくなる。