アート探検 事始め

 

 SHOくんの始めたアートについて紹介したい。

 彼はフェースofワンダーにき始めて、3回くらい。ボクは彼の感性や心の動き方なんて、まだ何にも知らないから、少し離れたところから彼の表情や手の動きを見て、一緒に活動しているお母さんやお父さんに「きょうは絵の具で遊びましょう」とか「きょうは綿棒や指で紙の上に自由に線を描きましょう」とか言葉をかけるだけだ。

 もちろん、「遊びましょう」「自由に描きましょう」って言われたって、お母さん、お父さんはとまどうばかりだから、ボクは、紙の上に絵の具を直接盛り上げ、絵筆で混ぜ合わせる。それから指や棒や綿棒で線を描いていく。「ぐるぐる線!お次はジャンプ、ジャンピング、ぴょんぴよん」そんな風に声を出しながら、アート遊びの感じを伝える。

 学校で絵の具はパレットに一色ずつ出して色を作ると教えられてきたお母さんやお父さんはそれだけでびっくり(笑)。おそるおそる、SHOくんと一緒に絵の具を出して紙に盛り上げ、混ぜていく。色は思わぬグラデーションになって紙の上に広がって行く。

 「おお・・・!」「わあ、きれい!」そんな声が二人から出るようになると、それまで緊張していたSHOくんの表情も緩み、目も輝き出す。

 第1回目の活動はそれでおしまい。次は「手で絵の具と遊ぶ活動」をやる。SHOくん、お母さん、お父さんの三人は前回の活動をスタートする。頃合いを見て、ボクは紙の上の絵の具を指ですくい取ってお父さんの手のひらにぬる。「いやだあ!」びっくりするお父さん。すかさず、「ほら、SHOくんも塗っちゃえ」SHOくんの指に絵の具をつけ、お父さんの手に絵の具をつける。「お母さんの手にも塗ろう!」SHOくんは大喜びで逃げるお母さんの手に絵の具をつける。第2回目の活動はそれでおしまい。

 「こんな風に親子で絵の具で遊んだりしたことなかったですよ」「SHO、嬉しそうでした」二人の言葉にボクも嬉しくなる。

 フェースofワンダーの活動は、家での親子関係とは違った関係を作り出す。それもアートが持つ不思議な力だ。

 第3回目の活動は、「筆で模様を描き」。模様っていうのは心が開いて、描く喜びがなければなかなかむずかしい。いろんな形や色が跳ねたり、ダンスしたり・・・それが目指す模様だ。どんな模様が生まれるのだろう?ボクは少し遠くから見ている。3人はまず、手のひらに絵の具を塗り一本一本の指に線を描いて行く。すると手が木立ちや葉っぱのように見えてくる。それを開いたり閉じたり・・・遊びが生まれてくる。SHOくんは嫌がるお父さんの手首を押さえつけて、手の甲や爪にも色を塗り、紙に手形を作ったりする。

自由な活動がどんどん生まれ始めたのだ。

 これがSHOくんのアート遊びの事始め。

 やがて、それはSHOくんのオリジナルな表現を引き出すアート探検の旅の力になって行くだろう。